最初、誰から持ち出したのか覚えてないけどつるんで遊ぶ仲間が次々とポケベルを持ち始めた。
私もポケベルを持ちたい。
親に頼んでみたけれど「駄目だ」と却下された。
それでもポケベルを持ちたい。
ポケベルの月額料金は、小学生時代に貰ったお年玉が郵便貯金に貯めてあるので支払える。
でも、契約するには親の承諾書が必要だった。
遊び仲間の誰かに筆跡を変えてもらい契約しようかとも思ったが、誰の字でも大人が書いたようには見えないと諦めた。
諦めきれない、どうしてもポケベルが持ちたい。
契約事務手数料を手にして夕方の街をふらふらしていた時、そうだ!両親じゃなくても見た目が親子に見えればいいんだ!と辺りを見渡すと仕事中の40代くらいのキモいおじさんが目にとまった。
そのキモさが親子のリアル感をあたえるのだ。
「あのぉすみません。少し時間ありますか?」とおじさんに声をかけてみた。
喫茶店に入り、自分が中学生であること、夜遊びしてる仲間がポケベルを持ち始めたこと、両親に頼んでも駄目だったこと、手短に事情を説明し、今からポケベルの契約手続きに付き添い、親のふりして承諾書欄に名前を書いてもらえないかと頼んでみた。
返事はOKだった。
お互いどこの誰かもわからない2人で契約窓口に行き、契約手続きをして私は欲しかったポケベルを手に入れたのだ。
おじさんは段々いちゃいちゃと体を密着させてきた。
なるほどねぇ…おじさんがどんな理由でOKしたのかがわかった。
SEXだ。
無理無理!だっておじさんキモいんだもん。
私の欲しい物は手に入った。
おじさんは名前を書いただけ。
私はおじさんに軽くキスして「バイバイ!ありがとう」と言って足早に街の人ごみに紛れた。
ポケベルは深夜徘徊する私達の連絡網になった。
ポケベルがまだ数字しか送受信出来なかった時代。
私達は《01》は駅前ロータリーのベンチ《02》はマクドナルド《03》は…数字二桁が今いる場所の表を作り、仲間同士で《105216》どこにいる?《02ー2164》マクドナルドにいるよ!《1919》行く行く!《108410》電話して!…表と数字の語呂合わせで状況がわかるようになった。
当時、ポケベルは本当に便利だった。
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