アルバイトを辞めた私は、知君の集金に同行するようになった。
車での移動、集金する家に着くと「ちょっと待ってて」と言われ助手席で待った。
ほんの5分くらいで知君が戻ってきて、車を走らせ次の集金へ行く。
丸1日その繰り返し。
移動してる最中、私は両親、保護司、仲間に言えないよっ君の話や少年院の話を知君に話していた。
S(覚せい剤)やってて楽しかったこと、Sで生活出来なくなったこと、少年院であったこと、そして、少年院仮退院して半年でネタ(覚せい剤)を喰った(打った)こと、そんな話ばかりしていた。
ある日、私がネタの話をしていたら知君が「知り合いからネタ貰えるから、今度一緒に喰う?」と言ってきた。
マヂで?手にはいるの???
私は「うん。喰いたいな」そう答えた。
後日、知君がネタを用意したとのことで知君とネタを喰うことになった。
私が炙りたいと言ったのでアルミホイルを買って、昼の10時から夜の10時まで2800円で入れるレンタルルームに入った。
レンタルルームに入ると知君がネタとポンプ(注射器)をポケットから取り出した。
しゅん君の時に使った採血用の太い注射器とは違い、マイジェクターの赤ペン(細いキャップが赤い注射器)だった。
知君がネタをポンプに詰めて水で溶かし、知君は用意したポンプを持ってトイレに入り漬けた。
私の前で漬けることはしなかった。
信用されてなかったし、知君は用心深かった。
その後、私に打ってくれるネタをポンプに詰めて水で溶かしてくれた。
「とりあえず、量少な目にしたから」と言われ、私は腕をタオルで縛った。
「うゎあ、血管細いな」と言われた時は、しゅん君に打ってもらった時みたいに何度も刺されるのかなと思った。
でも、知君は一発で入れた。
でも、あれ?キマった感じがしない。
入れたの???
キマらなかった私は買ってきたアルミホイルでネタを炙り始めた。
ネタを炙り始めた私を見て知君は「もっと量増やしても大丈夫そうだね。なんかキマってないみたいだから追い打ちしてみる?」と聞いてきた。
「うん」
そして、追い打ちをしてもらったらキマった
。
追い打ちの時も一発で入れた知君。
この時点で、知君がそうとうネタを喰ってる人だと気づけばよかった。
その時は、しゅん君みたいに何度も刺されて痛い思いしなくて済んだことをよかったと思っただけだった。
そして、知君とレンタルルームを延長して、知君が用意したネタを使い切った。
私は知君は知り合いに頼んでネタを用意してもらったんだと思い疑わなかった。
一緒に喰った後も以前と変わらず、集金で車の移動に同行してたし、これといっておかしなことも無かった。
知君と行動をするようになって、1ヶ月ちょっとが経った頃、知君の仕事に同行するばかりじゃなんだからと、知君が仕事の休みをとったと言った。
今日1日は自由だからと言われて、知君とご飯を食べていると、知君の携帯が鳴った。
仕事の先輩からだった。
知君は「勘弁してくださいよ。今日1日は無理だって言ったじゃないっすか」と言ったけど、どうしてもと言われてるらしく、私が「いいよ。仕事でしょ。ご飯食べ終わったら仕事に行った方がいいよ」と言うと、知君は「のりとは長い付き合いになりそうだから言うけど、俺、ネタの売人やってるんだよ。集金っていうのは売人やってるって言えなくてさ」と言った。
えっ?売人???
今まで同行して行っていた集金は集金じゃなくて、ネタをデリバリーしていたってこと?
私は知君に売人だとカミングアウトされても、あんまり驚きはしなかったけど、さわやかな笑顔をする知君が売人をやってることが信じられないと思った。
薬物をやってるから悪い人とは思わなかったし、買うにしても売るにしても覚せい剤取締法に違反することには変わりない、そう思った。
私の細い血管に一発で注射した知君の正体はネタの売人だった。
知君は集金だと言ってネタをデリバリーしていた時、ネタを喰って動いていたと言った。
もしかして気づいたから、私がSとか少年院の話をしてきたのかと思ったとも言われた。
私は知君がネタ喰ってるなんて微塵も思っていなかった。
ただ、周りの大人に話せないことを知君に話していただけだった。
それがネタを引き寄せた結果になった。
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