知君が、自分はネタ(覚せい剤)の売人だと言った。
正確に言うと、ネタを売ることを本業にしている先輩(みっしー)の手伝いをしているということだった。
それがわかってから、ネタを売りに徘徊する知君と行動する時、私もネタを漬けてもらって同行することが多くなった。
カーステレオからはCHARAの
優しい気持ちや広末涼子の
MajiでKoiする5秒前、エレファントカシマシの
今宵月のようにが流れていた。
三日三晩、寝ずにネタを売りに車での移動。
疲れる。。。
ネタを喰って(打って)移動して、途中で追い打ちしてもらって移動して、ご飯は食べたくなかったけど、知君はアイスクリームやゼリーなどの食べやすい物だけでも食べた方がいいと言い、私は無理にでも食べた。
売り物じゃない手持ちのネタが切れるとだんだんヨレてきて切れ目でしんどくなる頃、私は家に送ってもらい帰された。
炙ってた時は尋常じゃない量を体に入れてたので5日は寝ずに、寝る時は起きてるのが限界になって気絶寝するという感じだった。
打つと入れた瞬間にキマるし、炙りの時のように大量のネタを体に入れるわけじゃないけど、一瞬でキマる分、体に負担がかかるみたいでヨレ方が炙りの時よりきつかった。
そんなある日、それまでと同じ様に知君が売り物じゃない手持ちのネタで私に注射してくれた。
漬けて1日目、パキパキでマシンガントークを知君に炸裂して、何度か追い打ちをしてもらって終わった。
2日目少しヨレてきて、移動する車で周りに走ってる車が気になり始め、知君が売り物のネタを渡しに行く時、助手席に取り残された私は歩道を歩いている人が気になってサングラスをかけておとなしくしていた。
2日目も何度か追い打ちをしてもらった。
3日目の夜、知君の実家に連れて行ってもらった。
そこでネタを漬けてもらうことになった。
私はその時すでに疲れ切ってて頭が回らなく、ちょっと打ってもらうのがしんどいかもと思ってた。
でも、知君に「最後の一発だけど、入れる?入れないならもう喰う場所ないからおしまいだけど」と言われた。
知君は路駐してネタを喰うことをしなかった。
車で喰う時は夜、一方通行の細い道に車を止めて打ってくれたり、知君の友達が車の運転をして走ってる高速道路とかでは打ってくれたけど、基本、車で喰うことはしなかった。
喰う場所は公園のトイレだったり、知君の実家だったりだった。
最後の一発と聞いて、喰いたいと思った私は腕を縛り打ってもらうことにした。
知君「入れるよ」私「うん」
入れてもらった私はフラフラになった。
それまで、入れてもらった感覚とは違うし、初めてしゅん君に入れてもらった時みたいに頭痛がするわけでもない。
知君にはフラフラなことを言わず、知君の実家から車まで必死に歩いた。
車まで来て車に乗り込むと同時に、私の意識が遠のいていった。
眠りにつくように気絶したのだった。
そんな状態になった私を見た知君は、そうとう焦ったと思う。
たまに意識がふぁーっと戻ると、知君はネタ汗を流しながら団扇で扇いでくれていた。
私の額にはコンビニで買ったと思われる氷の入ったビニール袋が乗せられていた。
知君「大丈夫か?」私「うん」返事を返してまた意識が遠のいていった。
再び意識が戻ると、団扇で扇いでくれていた知君の姿がない。
私は不安になって車の窓ガラスを開けて、重い体を起こして身を乗り出した。
知君の車の後ろに一台の乗用車が止まっていて、窓ガラスを開けて身を乗り出した私を見た知君は急いで後ろの乗用車から戻ってきた。
多分、私が意識が遠のいてしまって困った知君が友達に連絡をとって、友達に出てきてもらったんだと思った。
戻ってきた知君に「ごめんね。大丈夫だから」と私は言ったが、しっかりしなくちゃという気持ちとは裏腹にまた、少しずつ意識が遠のいてしまった。
そして、最後の一発を入れてから5時間後の朝方、私の意識が完全に戻った。
意識が戻った私はすごい空腹で、知君にコンビニ弁当を買ってもらい、全部たいらげた。
知君は安心したようで、いつもと同じさわやかな笑顔でそんな私を見ていた。
無理してネタを喰ったことを責められることもなかった。
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