父が亡くなってしばらく経った頃、家電が鳴った。
母が電話に出ると母の顔色が曇った。
母「えぇ…えぇ…明日?どんな用件ですか?…はい…わかりました」
電話を切ると母は私に「どうしよう…明日、お父さんのお姉さんと妹達が家に来るって…」
え?なんの用事?
…きっとお金の話だ。
母は「どうしよう」と動揺して不安がっている。
母「のり、どうしよう…お母さん頭も悪いし弁も立たない…お姉さんと妹達3人にやりこめられちゃうよ…どうしよう…」
私「アタシまだ子供だけど、ママが話できないならアタシが出るよ?」
母「本当?のり子が応対してくれる?お母さんには出来なさそう」
私「私が出るのは全然いいけど、向こうがどういう事言いに来るかわからないけど、話の内容によっては縁切れるかもしれないよ?」
母「それでもいい…もうお父さんいないし。のりが親戚関係と縁が切れてもいいなら…のりは切れてもいいの?」
私は父方の親戚が母いびりをしていたのを知っていたので好きじゃないし、従兄弟とも仲がいいわけじゃなかったので縁が切れてもよかった。
私「縁切れてもいいよ。つか、明日来るっていうのもどうせお金の話でしょ…縁切った方がいいよ。お父さん亡くなったんだから無理して親戚関係続けることないし。ママ頑張ったと思うよ。今までよく耐えてきたよ」
母「うん…」
私「でもさぁ、何て言ってくるんだろう?まぁ、おばあちゃんが亡くなった時は遺産とかで言ってくるのはわかるけど、お父さんが亡くなって遺産ってことじゃないよね」
母「そうだね…でも3人揃ってくるんだから何かあるんじゃないかと思うんだけど…」
私「ま・ママは何も言わなくていいよ。のりが撃退するから!大丈夫だよ」
母「のり、明日はお願いね…お母さんがもっとしっかりしなくちゃいけないのに…」
私「大丈夫大丈夫!ママのそういうとこ好きだから、気にすることないよ」
そして翌日のお昼過ぎお父さんの姉妹は3人揃ってやってきた。
姉妹はお姉さんが埼玉県、妹の1人は群馬県、もう1人の妹はどこに住んでるのかわからなかった。
部屋にあがってもらい母は姉妹にお茶を出した。
テーブルを挟んで私と母、向に姉妹達。
お姉さんが「今日は判子代を貰いにきたのよ」と母に言った。
母はビクビクしながら「判子代ですか?」と判子代がなんなのかわからないといった様子だった。
私が「今日の用件は母じゃなく私が聞きますので…」
姉妹達「あら?どうして?」
私「あなた達が今まで母が何も言えないの知っててイジメてきたから、母はあなた達を怖がってて話なんか出来る状態じゃないので!」
私「判子代のことは父が生きていた時に、父にも要求してたのは知ってます」
父が癌になって仕事を辞めた後、家が立ち退かなきゃいけなくなって、新しい家を建てて出来上がった頃に、下の妹がやってきて立ち退いた家と土地は私達が買ったものだから勝手に立ち退くなんてと父に言いにきたことがあった。
それまで父は母や私より姉妹達や私の従兄弟の関係を大事にしてきた。
バブルがはじけて上の妹の旦那の会社が倒産したときにはお金も貸した。
母と私に隠れてお金を渡してたことも気づいてた。
父は愛情表現の下手な人でそうすることしか出来なかったのだろうと思っていた。
父は愛情表現でお金を渡し、姉妹達はそのお金が目当てだったということも知っていた。
でも、父は癌になって仕事も辞め、収入がなくなった上に家の立ち退きで生活に不安が出てきた時に、追い討ちをかけるように下の妹に勝手に立ち退いたことでお金を要求されて、父はその時初めて姉妹達が結局はお金目当てなんだという事に気づいた。
下の妹がお金を要求してきた時、私も家にいた。
下の妹が帰って行った後、父は涙目で「なんだったんだろう」と言った。
その時、父から古い家と土地は父が20代の頃、父がクリーニング店に見習い奉公で3年間住み込みで働いていた時におばあちゃんとおじいちゃん、姉妹達が働いたお金で購入したということを聞いた。
おじいちゃんが亡くなる前に遺産で兄弟がもめるのを避けるため、家と土地は長男の父が相続することを承諾すると嫁いだ姉妹3人に一筆書かせた事の話を父から聞いていた。
姉妹達が要求してきた判子代とはおじいちゃんが亡くなる前に一筆書いたときに押した判子を押した事のお金が欲しいというものだった。
は?何十年も前の話で、おじいちゃんと父が亡くなった今真実を知る者は姉妹以外いないのに…そう思った。
私「判子代が欲しかったなら、一筆書いた時に貰えばよかったんじゃないですか!?今更、思いついたかのようにそんな昔話されても困ります」
姉妹達「でもねぇ~」「そうよ貰って当然なんだわ」「私達が働いて買った土地だったんだから」「ねぇーっ」
私は「あなたが最後に父にお金を要求してきた時、あなたが帰った後父がどんなに傷ついたかわかります?」と下の妹に言った。
私「娘の私や母よりも、父はあなた達姉妹を大事にしてきたし、血がつながってるから信用してきたのに…父が入院しても見舞いにもこなかった、挙げ句の果てにお金まで要求されて…父があなた達姉妹を大事に思ってきたことくらいわかるでしょ!?わかってるからそういうこと出来るんでしょ?」
姉妹達「………」
私「とにかく、判子代払う気はありませんので!それでも判子代貰えると言うなら弁護士通して話しましょうよ!?法律的にその判子代を払わなきゃいけないことはないと思いますけど。あなた達本当に判子代貰える権利があると思ってるんですか?今まで父の立場上、私は思ったこと言いたいこと黙ってきたけれど、父が亡くなった今母を傷つけるようなことされたら黙っていませんから!」
姉妹達「そんなに怒らなくたってねぇー」「そうよねーっ」「貰えると思ったからだから…」
私「だから!判子代欲しいなら弁護士通して話しますから!母も私も難しい事わかりませんから!今後お金の話を持ってきたとしても弁護士に相談してからにしますから!」
私「用件って、それだけですか?」
姉妹達「そうよ。のりちゃんそんなに怒らないで…帰りましょう」「そうね…お邪魔したわね」
姉妹3人は顔を見合わせながら立ち上がると帰って行った。
正直、母を守りたかった気持ちが強くて、母を今までイジメてきた姉妹達に腹が立っていたのでハッキリ言い放ったことは気分がよかった。
この件以来、姉妹達からお金を要求されることもなかった。
もちろん判子代も話を持ってこなかった。
ただ、やっぱり親戚関係が遠のいたけど、母も私も関係が切れて一安心といったところだ。
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