物見君がよっ君ん家に転がり込んできて、よっ君と物見君が一緒に仕事に行くようになった。
毎晩よっ君と物見君と私は、S(覚せい剤)を炙っていた。
そのうち、まず私が洗濯物をしなくなった。
3日も洗濯機を回さなければ、よっ君の作業着がなくなる。
洗濯機を回しても干すのが面倒くさい。
Sをキメててくだらないことに集中してて、頭では洗濯物をやらなくちゃとわかっているのに違うことにハマってて洗濯物が出来なくなった。
それまで毎日作っていた夕御飯も、Sをキメて食欲がないためほとんど作ることがなくなった。
ご飯だけ炊いといてお腹すいた人が勝手に、ふりかけご飯とか卵かけご飯を食べるようになった。
草(大麻)を吸っていた時は、集まった仲間8人分のご飯を作っていたけど、大麻取締法違反で逮捕されたことで集まる仲間がいなくなったせいと、Sを吸うと食欲不振になるので食事を作ることがなくなった。
掃除はSでキマってるせいで必要以上にトイレ、バスルーム、キッチンをピカピカにし、ピカピカになった達成感で満足したって感じだった。
私は家事を放棄した。
洗濯物やらなくちゃと思いながら、よっ君に手紙を書いたり、ナンクロに没頭したり、毛抜きに集中したり、Sの効きで自分のやりたいことしか出来なくなっていた。
よっ君は仕事を段々休みがちになった。
ある朝、よっ君はSの切れ目で仕事を休みたいと言った。
3日連続で仕事を休んだ。
さすがに職場の人からよっ君ん家に電話が掛かってきた。
よっ君は電話に出たくないと言う。
よっ君ん家の電話は、よっ君が電話に出るまで鳴り止まないという勢いで鳴り続けた。
「のり、電話に出て俺が具合悪いって言ってくれよ」とよっ君に頼まれた。
私だって電話に出たくない。
その電話を掛けてきた職場の人は、よっ君が大麻取締法違反で逮捕されたことを知っていて、よっ君が保釈された後私も一緒に焼き肉をご馳走してもらったことがあった。
仕方ないので私が電話に出た。
「ぁ…先日はどうもご馳走様でした。あの…よっ君具合悪くて寝ちゃってて…はい…えぇ、えぇ、わかりました」ガチャンと電話を切った。
私はよっ君に「具合悪いなら電話してくるようにって言ってたよ」と伝えるとよっ君は「明日はちゃんと行くからよ」と言った。
そんなことを繰り返して、とうとうよっ君は仕事に行かなくなった。
よっ君が仕事を放棄した。
よっ君が仕事に行かなくなれば物見君も仕事に行けない。
最初のうちは私には仕事行ってくると言ってよっ君と物見君は作業着で家を出て行って、仕事には行かず車でSを吸ってフラフラして夕方家に帰ってきていたこともあったらしいが、8月の終わり頃には本格的に仕事に行かなくなった。
よっ君が仕事に行かなくなって、無収入になった。
家賃が滞り、電気代、水道代、電話代、ガス代を滞納するようになった。
それでもSは欲しい。
よっ君のお母さんにお金を借りては夜な夜なSを買いに行っていた。
家賃も公共料金も滞納してるのに2日に一度3㌘のSを買いに行っていた。
そのうち、よっ君のお母さんからもお金を借りられなくなった私達は、よっ君の部屋にあった漫画本を古本屋に売りに行き、CDを売り、貴金属を質屋に売りに行くようになった。
そして売る物がなくなった私達は、よっ君のお母さんが家出してきた時に持ってきて、置いたままになっていたよっ君のお母さんの物を売るようになった。
よっ君のお母さんの荷物の中から80万で購入したシルバーフォックスの毛皮のコートを見つけたよっ君はこれならお金になるだろうと私を連れて質屋に行った。
質屋を何件かまわって一番高く買い取ってくれるところでお金に変えようとしたけど、購入時80万の毛皮のコートは3万にしかならず、よっ君が「3万にしかならねーのか…だったら冬になったらのりが着た方がいいよな」と売るのをやめた。
どれがどのくらいの価値があるのかわからないので最終的には、質屋に電話を掛けて出張買い取りでよっ君ん家に呼んで、質屋さんが部屋を見て買い取ってもらえる物を査定してもらうことになった。
質屋さんが来た。
よっ君はよっ君のお母さんの荷物からCHANELのバッグ数点を出して査定してもらったけど、保証書がないので安くしか買い取れないと言われて「だったら、のりが使った方がいいよな」と売るのをやめた。
質屋さんが「ぁ!そのハンディビデオカメラなら高く買い取れますよ!」と言った。
ビデオカメラは大ちゃんとか清佳、加代子と遊んだ時にSをキメてるところを楽しく撮影したりしていたので売りたくないと私が言って、結局売ったのは玄関に置いてあった大理石の傘立てを5千円で買い取ってもらっただけで質屋さんには帰ってもらった。
そんなこんなだったけど、2日に一度はどうにかお金を作り3㌘のSを買いに行っていた。
2日に一度3万がS代で消えていって食料が買えなくなった。
私の母が月に2~3回食料を買いだめするためによっ君ん家に来る時にしか食料を調達出来なくなっていた。
そして3ヶ月電気代を滞納してて、そのお金も私の母に払ってもらうことになった。
Sという魔の手に捕まった私達は生活出来なくなっていた。
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