ある日、よし君が「のり…毎日のシンナー買いに行くの面倒くさくね?」と話を切り出した。
「正直シンナー代、かぁちゃんに借りたりしてるんだよな…」
シンナー代を借りてるなんて知らなかった。
「でさぁ、いっそのことシンナー工事現場で盗まね?」とよし君に言われてシンナーを盗みに行くことになった。
夜中、建設途中の都営住宅で盗むことにした。
現場に到着すると「のりは車で待ってていいから」私は「つか、シンナーある場所わかるの?」と聞いてみたら「俺、型枠大工だぜ!だいたいの場所くらいわかるよ!大丈夫だよ」とよし君は一人で暗闇の工事現場に入って行った。
カツンカツンとよし君の工事現場の階段を上がる音が聞こえた。
10分もしないうちにシンナーの一斗缶を持ってよし君が戻ってきた。
さすがに一斗缶そのままっていうのもマズいとコンビニで1.5㍑の水のペットボトルを2本購入し、公園で入れ替えることにした。
でも、ジョウゴとかは用意してなかったんで、私がペットボトルを持ちよし君が一斗缶を注いだ。
でも、一斗缶の1/3くらい注いだらペットボトルがいっぱいになった。
コンビニで買った1.5㍑のペットボトル2本分はシンナーを確保出来た。
当分、新宿に行かなくていい量だった。
シンナーの入った一斗缶は公園の草むらに捨てた。
私は盗んできたシンナーを毎日のように吸っていた。
よし君が仕事に行ってる最中シンナーを吸っていると、天井が船に乗ってるように揺れた。
私はそれまで、シンナーでラリっても幻覚を見たことがなかった。
もちろん記憶が飛ぶなんてこともなかった。
でも、明らかに天井が浮いたり沈んだりしている。
おかしいなぁ今までラリってたけどこんな事初めてだと不思議に思ったけど、私は盗んできたシンナーを吸い続けた。
寝室のUーSENからは酒井法子の
蒼いうさぎが流れていた。
そして、ある朝目が覚めると呼吸が出来ない。
私は焦った。
息が出来ない状態でシンナーを吸うと呼吸が出来る。
深刻なシンナー中毒症状だった。
それまではシンナーに依存していただけでシンナーが手放せなくなることはなかった。
依存ではなく中毒になったのだ。
この状態はマズいと思った。
新宿で売ってたシンナーは純度がだいたい80%、盗んできたのは純トロだったのだ。
そんな純度100%のシンナーを毎日吸っていれば、中毒になっておかしくない。
とにかくシンナー吸わないと息が出来ない事態をどうにかしなくてはと危機感に襲われた。
寝て起きた時が一番ひどかったので、目覚めたら即ワンティ(シンナーを染み込ませたティッシュ)でシンナーを吸う、その後少し落ち着いたらシンナー吸うのをやめる、それを繰り返しながら一日に吸う量を減らしていった。
そして、シンナー中毒を克服した。
完全にやめることは出来なかったけど、純トロって怖いと心底思ってシンナーを吸う回数が減った。
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