知君が私ん家に転がり込んできたばかりの、まだ知君がネタ(覚せい剤)の売人をやめたばかりの頃の話。
その日は知君の友達がネタを引き(買い)たいということで売人だった知君に電話がかかってきた。
そして、私も一緒にネタ元の先輩(みっしー)の所へネタを引きに行った。
知君はディアマンテとシビックとマークⅡクオリスと普通のワンボックスのワゴン車、4台を乗り分けていた。
みっしーの所に行くときはシビックが多く、
買いに行く前にディアマンテからシビックに乗り替えるために知君1人で車を乗り替えに行って、私を迎えにきてもらった。
一緒にと言っても私はみっしーとは面識がある程度で、みっしーの部屋に上がり込んだりはしなかった。
みっしーとはこの先仲良くなるんだけれども、この時はあくまで知君の先輩、そういう感じだった。
みっしーから知君の友達のネタを買って、知君と私でガジり喰い(売り物のネタを無断で抜いて喰っちゃうこと)をし、ネタを友達の家まで持って行った。
友達は炙り専門だった。
ネタを渡して私ん家に戻る途中、車を乗り替えるため知君の実家の近くの駐車場に寄った。
その時はシビックからマークⅡクオリスに乗り替えた。
マークⅡクオリスで私ん家に向かう途中、知君の家の前を通り過ぎた時、知君の携帯が鳴った。
携帯の着信番号に心当たりがなかった知君は「誰だ?」と携帯に出た。
知君の顔色が曇った。
「は?何わけわかんねーこと言ってんだよ…知らねーよ…今仕事中だから電話切るぞ!」と言って電話を切った。
私が「誰だったの?」と聞くと「警察…今、俺ん家にガサで来てるらしい。すぐ帰ってこいって言われたけど帰るわけねーじゃん」と言った。
どうしてガサが入ったのか知君に聞いたところ、売人やってた時に客の1人がネタ喰ってテンパってグリッて(勘ぐって)警察署に走った(自首した)らしい。
そいつが警察に走ったことでもう1人の客もパクられて、その2人の供述でネタ元が知君だということが警察にバレてガサ入れに至ったという話だった。
もし、2人じゃなく1人だったらガサ入れまではされなかっただろうと知君は言った。
証人が2人以上になると証拠扱いになり、裁判所から礼状がとれるということだった。
知君が「そういえば、ネタ引きに行く前にディアマンテからシビックに車乗り替えた時、俺ん家の前にそれらしき奴らが群がってた」と言っていた。
知君と私はさっき知君の友達にネタを渡す前にガジり喰いしていて体にネタが入ってる。
知君は慌ててさっきネタを渡した友達に電話をかけて事情を話し、もうネタを炙ったかを聞いた。
友達はまだネタを炙ってないと言った。
それを確認した知君は車をマークⅡクオリスからワンボックスのワゴン車に乗り替えて、ネタを渡した友達の家に戻った。
そして、知君は友達を拾うと知君の実家の近くに車を止めて「リビングの棚にポンプ(注射器)があるから取ってきてくれよ」と友達に頼んだ。
友達は最初嫌がった。
知君は「道具(注射器)だけでネタは入ってないから、取りに行っても体に入ってなきゃパクられないから」と頼み続けた。
根負けした友達がわかったよと道具を取りに知君の実家へ向かい歩いていった。
警察は待ち構えていなかった。
友達が無事、道具を回収して戻ってきた。
そして、知君は道具と私を私ん家に送って、友達を送りに行ってしまった。
私は、私ん家にも内偵が入ってたらどうしよう…知君が置いていった道具を眺めながら、私の体にもまだネタが入ってることでかなりグリッた。
私がグリッていると知君から電話がかかってきた。
知君「ネタが抜けるまで、のりん家には帰らないから。のりん家に迷惑かけたくないから」と言われた。
私「わかった…でも、電話かけたら出てよ。心配だから」と言うと「わかった」と知君は言った。
電話を切って数時間経ったとき、知君から電話があって「もう、大丈夫だから。ただ、ハンパなくヨレて電話に出れなくなると思うから電話した」と言われた。
なんで大丈夫なのかを聞いたら、数日前から旅行に行っていた知君の両親が帰ってきて、知君が事情を話して、顔の利く診療所でネタが抜けるよう点滴を2本打ってもらったとのことだった。
その説明をしている知君のしゃべり方は本当にだるそうだった。
その後、すごいヨレてる知君から何度か電話がかかってきた。
点滴でネタが抜けるのがすごい辛い、眠いのに点滴を打ったせいでトイレが近くなり寝てられないと言っていた。
後にも先にも、知君がパクられそうになったのは私の知ってる限りこの時だけだった。
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