同棲し始めてから半年が経った。
シンナーを吸ってばかりいてひきこもりがちだった私が、久しぶりによし君と一緒に浦安の男仲間に草(大麻)とチョコ(大麻樹脂)を売るため出掛けることになった。
本格的な売人として売るのではなく、ようは売人と男仲間の間に入ってお金を上乗せし、小使い稼ぎをするということだ。
出無精の私が一緒に行くということが、よし君にとっては嬉しいことらしく、出掛ける支度するのもルンルンな様子だった。
「のりぃ♪このサンバイザーに合う服ってどれだと思う?」と浮かれたよし君が聞いてきたので、私は自分の支度をしながら「んー…コレかコレじゃん?」と答えた。
よし君は「おぉ!つか、のりってセンスいいよな♪でもブランドとかうといよな」と言いながらニコニコ顔で、なんかそんなよし君のオーラに流されちゃって私もなんだかんだ言いつつテンションが上がった。
私はいつもは怠がってよし君のQUIKSILVERのパーカーにダボダボのCROSS COLOURSのオーバーオールとキャップをかぶる格好なのに、何故かその日は白のヘアーバンドでパーマがかかった髪を上げて、ワインレッドの口紅を塗り、黒のロングニットワンピースの前ボタンは上から二つしかとめず、ワンピースの下にチューブトップと黒のショートパンツを着て、ヒールが10㎝くらいのサンダルを履いてお洒落をした。
よし君は白のサンバイザーでドレットヘアー
、赤のTシャツでウインドブレーカーと7分丈のダボダボの腰パンは白だった。(チーマーとかラッパーとが流行ってた時代だった)
必要以上に支度に時間を掛けて、2人で気分よくGT-Rに乗り込んで浦安まで向かった。
車の中は後部座席を取ってウーハーを積んであった。
CDをかけると会話が出来ないくらいうるさい。
私が大音量が嫌いだったから、よし君は少し音を落としてくれて「こんくらいなら平気?」なんて気遣ってくれた。
珍しく私が出掛けるので、私の機嫌が悪くならないようにって気遣ってくれたみたいだった。
よし君はルンルンだった。
よし君が「本当、マジで2人で出掛けるの久しぶりだよなぁ!たまにはいいべ?」と言った。
確かにずっとシンナー吸ってて、普段の買い物とか友達を駅まで迎えに行くくらいしか外に出てなかったから、私は「そうだね!アタシが外出するなんて超珍しくない?」と話がはずんだ。
ナンパされて出会った日のことや、住み始めた頃のこと、仲間のことなど色々な話。
そうこうしてるうちに、中央高速から首都高を過ぎで1時間ちょいくらいで浦安に入った。
中央高速でよし君のGT-RがGT-Sに追い抜かれた。
よし君は「なんだ?GT-Sが生意気に追い越しやがって」とバトルが始まった。
相手のGT-Sもバトルする気満々でついてきた。
追い抜いたり追い抜かれたり、私は「怖い」とシートベルトをした。
勝負は首都高でついた。
よし君の車は首都高でも150㌔から180㌔くらいスピードを出してぶっちぎった。
よし君は車を走らせる時、いつもこんな感じだった。
「のり、もうすぐ着くから」と目的地が近いのを教えてくれた。
よし君は草とチョコを渡す仲間(だいち君)に浦安に着いたことを携帯で連絡した。
そして、外国人の売人に「555だけどハンバーガーとポテト10ずつ…」って電話した。
私はハンバーガー?ポテトって何?と思ったので、携帯を切ったよし君に「つか、ハンバーガーって何?わけワカメだよ」と聞くと「555が名前の変わりでハンバーガーが草でポテトがチョコって感じの暗号だな」と説明をされた。
私が「ふーん…いつもそうやって買ってたんだ」と言うと「そうだな。のりは誘っても、いつも来ないからな。」とよし君は言った。
仲間の家に寄ってから仲間を車に乗せて草とチョコを買いに行くのかと思ってたらどうやら違うらしい。
「アイツ(だいち君)に教えたら、金、上乗せ出来なくなるじゃん。売人を教えてないから先に買いに行ってから届けるんだよ」とよし君が言った。
「1パケに大体どのくらい上乗せすっかなぁ…」頭でいろいろ計算しながら一人でブツブツ言っているよし君。
私はお金上乗せすることなんて興味ないし、車窓の流れてく景色を見てるのが好きだったから黙ってサイドミラーらへんを眺めてた。
浦安に着いて少し走るとよし君は車を道路脇に止めて「ちょっと待っててな」と車から降りて後ろの交差点へ行ってしまった。
おとなしく待ってたら10分しないで「終わったよ。じゃアイツん家向かうかぁ」と車を出した。
私が「結局、いくら乗っけるん?」と聞いてみたら1パケ千円ずつ上乗せすると言い「最低2万くらいは欲しいだろ…」とよし君はまだ考えてる様子だった。
私はいくらでも構わないから考え込んでいるよし君を放っておいた。
私はだいち君の家までが遠く感じてイライラし始めた。
よし君に「まだ?」と不機嫌そうに聞くと「ごめんごめん、もうすぐだから怒んなって」と言った。
それからだいぶ走って、だいち君ん家に到着した。
よし君に「一緒に行くか?」と聞かれたけど、不機嫌になっていた私は「行かない、車で待ってる」と車に残った。
よし君が戻ってくるのをイライラしながら煙草をふかして待ってた。
遅い…イライラ。
だいぶ時間が経ってよし君が戻ってきた。
私は戻ってきたよし君に「スゲー遅いじゃん!何分待たせたと思ってるの?」と怒った。
怒ってる私に言いにくそうに「だいちも昭島まで連れてってもいいかな?とか聞きに来たんだけど、のりが嫌なら2人で帰るし…」私は「別にくるのはいいけど。私はよし君にイラついてんだよ。わかってんの?」よし君「本当にごめん!…じゃあ呼びにいくわ。今度はすぐだから!」私「わかった…すぐじゃなきゃマジ知らん!!」と、怒りつつもだいち君を連れて帰ることを許した。
私は、だから自分の用事じゃないのに出掛けるのは嫌なんだよと考えてる間にだいち君を連れてよし君が車に戻ってきた。
私はイライラしてたけどだいち君に対しては愛憎よく話かけた。
たまに、まだ怒ってることを表すためよし君を睨んだ。
そしたらよし君は「そんな怒った顔するなよ…な?」と申し訳なさそうに言った。
だいち君は後部座席を外してウーハーを積んであるところにさまっていた。
かなりきつそうな体制だったけど仕方なかったので「助手席、前に出すね…狭くて大丈夫?」と一応気を使って3人で千葉の浦安から東京の昭島まで向かう高速道路に乗った。
3人でくだらない話をしながらもよし君にわざと話かけず怒ってんだよオーラを出してたのに、高速走りながら「ていうか、せっかく遠出したついでに六本木のパイプ屋さん寄って新しいパイプ買って帰らない?いろんな種類あるからさぁ。寄ってもいい?のり」とよし君が切り出した。
典型的B型性格に負けた。
はぁーぁ、私が機嫌悪いのわかってるくせに、よし君は私が本気で激怒してないのをわかってんだなぁと呆れる気持ち半分諦めた気持ちになった。
そして私は、イライラしてるの疲れたし気分切り替えるかなと思い「あんま高いのは駄目だからね」となんだかんだ言っても結局はよし君に振り回されてた。
そしてよし君とだいち君と私の3人で草とチョコを買った帰りに六本木のパイプ屋さんに寄ることになった。
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