夏、その日も知君と私はネタ(覚せい剤)を喰って(打って)いた。
車を運転する知君と助手席に乗ってる私は楽しく話をしながら、ネタをデリバリーで届けるため、客の家まで向かっていた。
車が左折する時、その左折する道からワゴン車が走ってきた。
すれ違うその時、知君の目つきが変わった。
そして知君は、車のクラクションをプーーーッと鳴らし、すれ違うワゴン車を止めた。
車から降りてワゴン車の運転席まで行った知君。
私は知君の知り合いなのかな?と思いながら、ワゴン車の運転手と話をしている知君を助手席から見てた。
一分も経たないで知君が戻ってきた。
知君が運転席のドアを開けた瞬間、知君のかけていたサングラスが飛んだ。
ワゴン車の運転手の男が知君の顔を殴ったのだ。
殴られた瞬間、知君はワゴン車の運転手の髪の毛を掴み3回顔面に膝蹴りを入れた。
見事な膝蹴りだった。
まるでドラマみたいだと思った。
「なんだてめぇ!」と言う知君に、まだ戦う気があるワゴン車の運転手。
ワゴン車の運転手は知君を殴ろうとするが、知君の方が喧嘩慣れしていて、拳があたらない。
逆に知君の拳が炸裂する。
勝てないと悟ったワゴン車の運転手はワゴン車の止まってる方じゃない方に逃げた。
追いかける知君、知君の履いていたビーチサンダルが脱げたので、助手席に座っていた私が車から降りてビーチサンダルを回収した。
ワゴン車の運転手は追いかけてくる知君と約10mの距離感を保っていた。
知君が車の方に歩いてくるとワゴン車の運転手も距離感を保ちながらワゴン車の方に歩いてくる。
それを知君がまたぶっ飛ばそうと、追いかける。
逃げるワゴン車の運転手。
それを何度か繰り返して知君は、戦意喪失したワゴン車の運転手をぶっ飛ばすのを諦めて、何故か止まってるワゴン車の方へ行った。
知君がワゴン車の運転席のドアを開け、そして私の待つ車に帰ってくると、車を発進させた。
私はなんでワゴン車の運転手が知君を殴ってきたのかわからなかったので「なんで殴ってきたの?」と聞くと「アイツの顔面めがけて舐めてた飴を吹き付けたからだと思う」と知君は言った。
私「なんでワゴン車止めたの?」
知君「すれ違いさま、こっち見て馬鹿にしたように笑ったから」
私「そうだったんだ。サングラスしてたから最初の一発で目の縁から血が出てる。大丈夫?」
知君「そっちは平気。そっちより、足の裏の方が痛いな」
足の裏を見てみると、真夏のアスファルトの熱のせいで、足の裏の皮がずりむけてた。
しばらく車を走らせると知君は車の窓を開けて、何かを投げ捨てた。
私「何捨てたの?」
知君「さっきのワゴン車の鍵捨てたんだよ」
最後にワゴン車の運転席のドア開けたのは、鍵を抜くためだったんだということがわかった。
あの後、ワゴン車はどうしたんだろうと、ちょっと可哀想に思えた。
それに、さわやかな笑顔をし、洋服も普通な知君が喧嘩慣れしていたのにはびっくりした。
知君が「アイツ多分、武道とかやってんだろうな。格闘技と喧嘩は違うのにな」と言った。
レンタルビデオ屋さんに寄った帰り、レンタルビデオ屋さんから出て、路駐してあった車に戻り、車を発進させようとした時、後からヤン車がファーーーンとクラクションを鳴らし、知君の車の前に止まった。
知君は後部座席にあった金属バットを取り出し、ヤン車の運転席のドアまで歩いて行き、運転手と話をし、知君の車に戻ってきて金属バットを乗せた。
知君は「相手、1人だから金属バットはいらない」と言って前にあった大学の人気のない方へヤン車の運転手と2人で入っていった。
私はすごい心配だった。
相手は一応ヤンキーだしと思って知君の帰りを助手席で待っていると、知君が戻ってきた。
知君が大学から出て来た時、すれ違いさまパトカーが到着して、警察官が大学へ入っていった。
知君は駆けつけた警察官には目も触れず、堂々と車に乗り込んだ。
え???嘘???
真っ白だったTシャツが血で真っ赤に染まってる。
「知君!血!」と私が言うと、知君はさわやかな笑顔で「これ?アイツの返り血だよ。殴ったら鼻血出しやがって、むかついたから壁に顔面こすりつけてやった」と言った。
知君とヤン車の運転手が喧嘩した所は、大学の寮の前だったらしく、喧嘩を見ていた大学生がいて、返り血浴びた知君にTシャツをくれたみたいで、知君はTシャツを着替えた。
知君の車には常に金属バットが積まれていた。
グローブも一緒で、職務質問された時に言い訳出来るようにしてあった。
付き合い始めてだいぶ経った頃には、警棒に硬いゴムをグルグル巻きにしたやつを持ってたこともある。
「これで殴りつけたら、肉が裂けるな」と言っていた。
知君が「喧嘩は、相手がどんなにがたいがよくても、絶対負けないって思うのが喧嘩に勝つコツ」と言っていた。
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