少年院を仮退院して初めての夏、私は母とショッピングに行き、浴衣を買ってもらうことになった。
いろんな色の浴衣があり、散々悩んだあげく赤紫の浴衣、青い帯の浴衣を買ってもらった。
そして、知君と花火大会に行く約束をして楽しみにしていた。
花火大会当日朝から浴衣を着付けた。
浴衣の着付けは少年院の盆踊り大会で習っていたので1人で着れた。
知君が迎えに来てくれる頃、外は霧雨だった。
「花火大会中止かなぁ」と残念そうに私が言うと「花火大会中止でも、浴衣着てる子連れて歩くのって憧れてたから、俺は嬉しいし別にいいじゃん」と知君は言った。
「のりは色白だから浴衣の色にあってるし」と言い、いつも通りネタ(覚せい剤)のデリバリーで車で移動してた。
帯が苦しくて車に乗ってるのはしんどかったけど、浴衣を着てる私を見て上機嫌な知君を見ていたら苦しいのなんて我慢できた。
ネタのデリバリーであっち行ったりこっち行ったりして、夜になった。
花火大会は7時からで、知君と私は6時30分には花火大会会場付近に着いた。
商店街には提灯がぶら下がっていた。
かき氷やフランクフルトも売っていた。
夕方まで降っていた霧雨はあがり、花火大会が始まった。
花火を見るより、浴衣を着ている私を連れて歩く嬉しそうな知君の顔の方が嬉しかった。
ひゅるるるるードーン!パァン!
花火も綺麗だった。
花火大会を満喫して、最後の花火が上がった後、ご飯を食べに行くことにした。
でも、どこのファミレスも浴衣を着た女の子で溢れかえり混雑してて、結局一駅離れたファミレスに入った。
知君は車を止めると必ずサッと降りて助手席のドアを開けてくれてた。
それまで沢山の男と付き合ってきたけれど、わざわざ助手席のドアを開けてくれる人はいなかったせいもあり、知君が助手席のドアを開けてくれることが、レディーファーストというかお嬢様な扱いをされてるようで私には新鮮で気分がよかった。
ファミレスに入ればお絞りを開けて渡してくれるし、ドリンクのストローもさしてくれる。
当時、私は17歳で知君は26歳。
私からは大人の男の人に見えてた。
気を回してくれることを知君の兼ね備えた優しさだと思ってしまったのだ。
浴衣を着たまま頼んだビールを飲み干す私を見て知君は「本当に美味しそうに飲むよな」とさわやかな笑顔で言った。
ビールの中ジョッキを頼んだんだけど、お腹を帯で締め付けてるせいで半分飲んだだけで苦しくなってしまった。
頼んだのに飲みきれないのは悪い気がして無理していると、知君が「ビール残してもいいよ。具合悪くなると楽しかったことが苦しかったことになっちゃうから。ね!」と言ってくれた。
楽しく花火大会に行けたし、知君はインスタントカメラで写真も撮ってくれたし、ご飯も食べて満足してた私に、知君は「ネタあったら喰い(打ち)たい?のりの浴衣を脱がしたいな」と言った。
ネタ!?
ネタ…喰いたい
そして、一晩夜10時から朝10時まで5400円のレンタルルームへ行き、知君の用意したネタを打ってもらった。
知君は打つのを絶対見ないでと言っていた。
見てると血管が逃げやすくなるからと言っていた。
だから私はいつも顔を背けて打ってもらっていた。
腕を縛って打ってもらう時、何度も打ってもらっているのに緊張していた私の血管は、人一倍血管が逃げやすいなと知君が言った。
逃げた血管に入れるために知君は打ってる注射器を片手で持ち、あいた手で私の腕を押さえて入れてくれてた。
新米の看護婦よりは知君の方が注射するのが上手い、そんな気がした。
「入れるよ。漏れてたら言って」と言われたけど、知君は一度も漏らしたことがない。
「漏れるとどうなるの?」入れてる最中に聞いてみた。
「なんつったら言いかなぁ…チクチク?んーヒリヒリっていう感じで痛いんだよ。痛くないなら漏れてないから大丈夫」と言い終わると同時に注射器の針を抜いた。
シャキーン!!
視界が冴え、浴衣を着ていた疲れが一気にふっ飛んだ。
口がカラカラに渇き、口臭が気になる。
知君も手首にしていたリストバンドを外し、手首の血管からネタを入れていた。
知君は入れ終わると道具(注射器)をしまい、私の浴衣を幕仕上げて私の太ももに口づけをした。
浴衣を脱がさずHをした。
途中で追い打ちをしてもらい一晩中絡み合った。
朝9時になり、チェックアウトの時間が迫り先に私がシャワーを浴びてベッドの上で知君がシャワーを浴び終わるのをまっていた。
その時、私は鼻くそが気になった。
知君もシャワーを浴びていて誰も見てない。こごぞとばからティッシュを丸めて鼻に突っ込んだ。
次の瞬間、ポタポタ…タラーッと大量の鼻血を流した。
知君がシャワーから出てくる前に鼻血止まって!と必死にティッシュを使ったけど鼻血は止まってはくれなかった。
シャワーから出てきた知君に「鼻かんだら鼻血が出ちゃった」と言った。
さすがに鼻くそほじったとは言えなかった。
でも、知君は「もしかして、鼻くそほじった?ネタの質悪いとたまに鼻くそたまるんだよな」と言ったけど、私は「ほじってない。かんだら出た」と言い通した。
まだ、そんな恥じらいがある付き合いだった。
鼻血が止まるまでチェックアウトを延長してもらった。
私が鼻にティッシュを詰めて、焦って浴衣を着ようとしたら「今、車から俺のTシャツと短パン持ってきてあげるから浴衣着なくても大丈夫だよ。そんな焦らなくて大丈夫だから」と言い洋服を持ってきてくれた。
ネタを効かせて浴衣は辛いだろうという知君の気配りで浴衣を着なくてもよかった。
知君は気が利く、それがこの時の私には知君は優しいんだと思っていた。
この時、気が利くのと思いやりがあるのは別物だと突きつけられることになるなんて、全く予想なんて出来なかった。
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